
Q1. 自己紹介をお願いします。
PHIと申します。大阪を拠点に、フリーランスのイラストレーターとして活動しています。日常出来事を言葉や文章に置き換え、それらをもとに膨らませたイメージをカートゥーンスタイルで表現しています。現在はイラストの仕事だけでなく、アーティストとしても作品制作を続けており、書籍やCDジャケット、キャラクターグッズ、アパレルなど、幅広い分野で活動しています。
Q2. イラストレーターになったきっかけは?
2017年にイラストレーターとしての活動を始めました。大学卒業後、会社に就職する道ではなく絵の仕事がしたいと思い、両親に1年だけ挑戦の時間をもらいました。最初は仕事もなかなか入らず不安な時期もありましたが、展示や個人依頼などを通じて人とのつながりが広がっていき、次第に長く続けられるキャリアへと育っていきました。
Q3. 今のカートゥーンスタイルに至った経緯を教えてください。
大阪にある美術系の高校でデザインコースを専攻していたのですが、当時の恩師が“形”にとても厳しくこだわる方で、課題一つ一つに対しても「美しい形を描くこと」を強く求められていました。少しでも手を抜くと厳しく指導されていたので、当時はかなり恐れていたのですが、今となってはその方のおかげで形に対するこだわりが自然と体に染みついたと感じています。
自分では“カートゥーンスタイル”と言っていますが、実は作品を特定のジャンルとして定義したことはありません。カートゥーンという概念を構成する「デフォルメ性」や「幾何学的な形の組み合わせによる表現」が、自分のスタイルに一番近いと感じていて、そのためにこの表現を使っています。
Q4. 今回の“食べ物シリーズ”を描いた背景を教えてください。
私は食べることが本当に好きで、もし絵の道に進んでいなければパティシエを目指していたかもしれません。それくらい、料理や食への関心が強く、学んでみたい分野でもありました。
「SPICE」と「ISCREAM」のクローズアップ
パスタをモチーフにした作品は、ポートフォリオの表紙用に描いたもので、パスタの中に4-5人が埋もれていますが、よく見るとその中で絵を描いているという構図です。ポートフォリオのタイトルは「SPICE」にしました。これは単に食に関する仕事がほしいという目論見もありますが、作品を通して依頼してくださる企業やデザイナーの方々に「自分の作品はメインとしてではなく、料理でいうスパイスのように、完成品を引き立てる存在として使ってほしい」という気持ちを込めています。
一方「ISCREAM」は、過去に開催された“ダジャレ”をテーマにした展示会のために描いたものです。日本語でも英語でも伝わるようなダジャレを考えた時に、“I scream!”という言葉遊びが直感的に伝わりやすいと思い、制作しました。
Q5. 影響を受けた作家や作品はありますか?
漫画家・入江亜季さんの『乱と灰色の世界』が好きで、特に表紙の構図やデザインに強く惹かれました。彼女の作品に見られるモチーフ同士の繋がりや線の美しさは、今回の食べ物シリーズで意識した要素でもあります。
『乱と灰色の世界』1巻と2巻の表紙から
内容はファンタジー寄りなのですが、日常に即したファンタジーを感じるような作品で、自分の作品にもそういったエッセンスが自然と反映されていると思います。
Q6. 今後挑戦してみたいことは?
立体作品の制作にチャレンジしたいと思っています。今年、ビリケンさんの白い像に絵付けするというお仕事をいただき、アクリル絵の具をスプレーで吹き付けるなど、普段とは違う技法にも触れることができました。立体物にペイントする経験は初めてでしたが、想像以上に楽しく、貴重な経験となりました。
今度は、立体物自体を自分の手で作ってみたいと考えており、今年8月に大阪で開催予定の個展で発表できればと思っています。